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【取材】同居親も別居親も子も安心できる、より良い面会交流を

2023年08月28日(月)

保育園で保育士のサポートを入れながら、ワークショップ型という独自のスタイルで面会交流支援を行っている「ボヌールシップ」。面会交流の継続が難しくなる様々な要因を取り除き、同居親、別居親の葛藤を下げることで、親子それぞれに様々なプラスの変化が見られるといいます。より良い面会交流のためにも、支援を全国に広げていきたいというナカヤタエさんの想いを伺いました。

面会交流をめぐる様々な課題と、サポートの必要性

――ボヌールシップで面会交流支援を始めたきっかけは何ですか?

2016年に株式会社Bonheurを立ち上げて、夫婦問題の相談業務を始めたのですが、相談を受ける中で、面会交流について悩んでいる方が一定数いる現状を目の当たりにしました。

特に小さいお子さんの場合、どうしても同居親から離れられず、別居親とはほとんど触れ合うことなく面会時間が終了してしまったり、交流がとても難しいんですよね。

かといって同居親からすると、乳幼児を別居親だけに預けることに不安を感じてしまいますし、そもそも親同士の関係性がよくないためスムーズに進まないこともあります。

ちょうどその当時、面会交流をめぐる悲しい事件も複数報道されており、サポートの必要性を強く感じました。

それらを解決する仕組みを作りたいという想いから、保育園で行う面会交流支援「ボヌールシップ」を立ち上げました。

同居親と別居親、それぞれの懸念点を払拭する環境と仕組み

――保育園で面会交流を行うのはなぜですか。

まず、施設自体が乳幼児用のつくりで安心安全ということ、そして保育士の付き添いがあることで、同居親が付き添わなくても安心して預けられることが挙げられます。

ボヌールシップの面会交流では保育士が付き添う(提供:ナカヤさん)

そして別居親は、お子さんの年齢に合った接し方を保育士から学ぶことができるので、育児に参加しながら我が子との絆を深めていけるというメリットもあります。

また、保育園では交流中に複数組同時にワークショップを行う形をとっています。リトミックをしたり、親子で工作をしたり、ワークショップが自然な親子の会話のきっかけにもなります。

複数組で行うことで、良い意味で我が子の発達や得意不得意が見え、別居親も自然と子どもの成長を見守ることができるからです。

 

ワークショップの様子(提供:ナカヤさん)

――親子で思い出に残る濃い時間が過ごせそうですね。

はい。学びのある濃い時間が過ごせると思います。同居親の懸念点である、育児に不慣れな別居親に預けることに対しての教育面の心配も解決できますね。

また、せっかくの親子の交流の時間、思い出に写真を撮りたいと思うかもしれませんが、複数組で行うため防犯面で自由な撮影を禁止しています。代わりに園のカメラマンが入って、親子で遊んでいる姿を撮影して写真をお渡ししており、とても好評です。

通常の面会交流では、親が一方的に子どもを撮るか、2人の自撮り写真になってしまい、第三者に撮ってもらう機会がほとんど無いそうです。

写真を見返してみると、最初の頃は硬かった表情がだんだん和らいでいく様子や、本当に楽しそうにはしゃいでいる表情も振り返ることができ、とても貴重な思い出になると思います。

 

親子でワークショップを楽しむ(提供:ナカヤさん)

他の方が写り込まないようにボカしを入れる等プライバシーを配慮した上で、毎回5枚ほどセレクトしてお渡ししています。また、カメラマンが男性のため、万が一の際の防犯対策も兼ね備えています。

写真は同居親にもお渡しできますが、中には別居親と子どもの交流を目にしたくない方もいらっしゃいます。不要であれば別居親のみにお渡ししますが、同居親が写真を通してお子さんの嬉しそうな様子を知ることで、面会交流をやって良かったと思えるきっかけになることもあります。


――写真のほかに、別居親が保育園での様子を知る仕組みはありますか?

お帰りの際に、通常の保育園の連絡帳と同じような連絡表をお渡ししています。今日はこんなことをしましたとか、排泄の回数、何をどのくらい食べたか等、預かり保育と同じようにお伝えしているので、別居親の皆さんにも安心していただけます。

連絡表(提供:ナカヤさん)

また、ご利用を迷われている方は、事前に見学して雰囲気を確かめていただくことも可能です。

親の葛藤が下がり子の自己肯定感が上がることで、より柔軟な交流が叶う

――ボヌールシップを通して、親にはどのような変化がみられますか?

それぞれの面会交流の取り決めに合わせて対応していますが、ボヌールシップで繰り返し面会交流を行うことで、別居親は子どもとコンスタントに会える安心感、同居親は子どもが安全かつ楽しく帰ってくる安心感により、少しずつ信頼関係が回復していきます。

別居親は最初の頃、別れ際に泣いてしまう方が多いのですが、毎回会えることで少しずつ表情が柔らかくなり、それが不思議と同居親にも伝わって、お互いの葛藤が下がっていくんですよね。

そうすると、たとえば1回2時間だった面会時間が徐々に長くなったり、同居親も気軽に別居親にお願いして仕事や美容院に行ったり、面会の機会が増えていくことも多いです。

(提供:ナカヤさん)

取り決めの枠が外れていき、柔軟な対応に変化する中で、ボヌールシップを通さずに面会交流できる関係が成立していく方も多くいらっしゃいます。

――子どもにはどのような変化がみられますか?

たとえば別居親が父親の場合、コンスタントに父親と会うことで「自分にも父親がいるんだ」という安心感が生まれて、少し暴力的だった子どもに落ち着きが出てきたり、他の子への接し方が優しくなったりしたこともあります。

最初は久しぶりに会う別居親にドキドキしていた子どもも、回数を重ねることで表情も豊かになり、本当に楽しく過ごせるようになったり、良い意味で主張やワガママが言えるようになったり、自己肯定感が上がっていく様子も伺えますね。

子どもの気持ちを汲み取り、最善の解決を考える

――面会交流支援を行う中で、難しいと感じることはありますか?

子どもの気持ちの聞き取り、汲み取り、そしてその伝え方がとても難しいことが課題ですね。同居親にも別居親にも言えない子どもの気持ちを、汲み取ったりキャッチすることが私たちの役割の一つですが、子どもとしては両親には言ってほしくないこともあります。

せっかく伝えてくれた気持ちをどのように両親に伝えていくか、伝えないのか……。お子さんとの信頼関係を築くことで子どもにとっても安心安全な場所でありたいです。

課題をどのように解決するのが最善なのか、今後も考え続けていかなくてはいけないと感じています。

ワークショップ中のお子さん(提供:ナカヤさん)

誰でも利用できる支援として、もっと全国に広まってほしい

――支援全体を通して、今後の展望や課題を教えてください。

面会交流支援を全国に広めたいという想いがありますが、支援には人手もお金もかかるので儲かる事業とはいえません。そうなると支援事業者も少なく、利用者からすると金額が高いので、使える人しか使えないのが現状です。

自治体によっては助成のある地域もありますが、第三者機関の無い地域も多く、面会交流支援が公共性のあるものとして浸透するにはまだまだ時間がかかりそうです。

面会交流中に作った制作物(提供:ナカヤさん)

――誰でも利用できる支援として、使いやすい利用料金になっていってほしいですね。

そうですね。私は、離婚したら第三者機関を使うのが当たり前になってほしいと考えています。個人で行う面会交流は、ちょっとしたきっかけで摩擦が生じ途絶えてしまうケースが多いので、まだ揉めていない段階から第三者機関を取り入れていただきたいです。

第三者を介することでお互いフラットに考えられるようになり、多少の葛藤があっても子どものために面会交流を行おうと思えるようになるのではないでしょうか。

面会交流支援が全国に広まって、離婚後の面会交流はまず第三者機関を使うという流れが一般化すれば、同居親、別居親、そして子どもの三者にとってより良い交流になると信じています。